塩田平の文化と歴史

● 前山寺(ぜんさんじ) 参道


 上田市大字東前山は、塩田城の城下町として知られる。
 その東前山の集落を南へ上って、塩田城跡の手前から左へ約300m歩くと、前山寺の山門に達する。通称”黒門”といわれる黒塗りの冠木門だが、これをくぐると、そこに展開するのが前山寺参道である。
 周囲5〜6mもある欅の大樹、二抱えも三抱えもあろうと思われる松や桜の巨木が、混じって立ち並ぶこの参道は、さすがに名刹に参入するにふさわしく、荘大で厳粛な様相をそなえている。
 この参道を上りつめて、石段を上ったところに、古風な屋根つきの門がある。専門的には「薬医門」といわれる形式の門で、他所から移建されたものだ。
 この門を通して前方に、三重塔が見える。大いちょうを右にして、そそり立つこの塔の典麗な姿が、門の中にみごとにおさまっていて、石段を上った人人は、思わず息をのむ。
 古い寺では参道のつき当りには、堂があり、その中に在す仏が信仰の対象となっていることは前にものべた。たとえば、大法寺も、法住寺も、高仙寺も、国分寺もみなそうなっている。この前山寺は、参道のつき当りに堂でなく、塔がある。塔そのものが仏の意味をもっているのだから、これでよいのだが、めずらしい例の一つである。
 それにしても、近ごろ、この参道を通らずに、直接、車を塔の横にのりつけて、見学する観光客が多くなってきたのは考えさせられる。
 参道というものはそれを歩くことによって、仏を拝するための心を整え、気を清浄にする場所なのである。

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