塩田平の文化と歴史


● 常楽寺 観音出現の霊場


 別所温泉相染閣(あいぜんかく)前に立って右手を望めば、一直線の道が常楽寺に向かっている。常楽寺の参道であることはいうまでもない。
 地図の上でこの参道の線をさらに延長していくと、石造多宝塔につき当たる。おそらく往古は、この塔へまっすぐの道が通じていたに違いない。(いまは石段が右にずれて、本堂の正面になっている)天台・真言などの古い宗派の寺は、たいてい参道のつき当たりに堂塔があることを前に述べたが、常楽寺でもこの多宝塔が信仰の中心となっていて、本堂には、それを守る坊さんがいたのであろう。
 その意味でこの多宝塔は寺にとっては最も貴重な存在で、決して付属的な石塔ではない。それは大法寺における観音堂、国分寺(現在の)における薬師堂、法住寺における虚空蔵堂と同じ意味をもつと考えねばならない。
 だからこそ、ここは、かつて大火焔とともに北向観音の本尊が出現された霊場だと言い伝えられているわけだ。歴代の住職さんたちの石塔も、また、たくさんの小型の五輪塔や、宝篋印塔など、この石造多宝塔を守るかのように立ち並んでいるのは、むしろ当然のことなのである。そういえば、この多宝塔を中心とする一帯の地域から、数えきれないほどの五輪塔など発掘されている。かつては、この多宝塔を中心とする大霊場があったことを示唆しているように思われる。

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