塩田平の文化と歴史

● 中禅寺 薬師如来 台座


 中禅寺の薬師様は、高い台座に坐っておられる。高さが89センチメートルもあり、いろいろなかたちのものが重ねられて、台座そのものが荘厳・華麗な芸術品である。
 このような形式の台座を「蓮華座」といい、一番上のお椀のような形をしたところが、蓮の花で、その上に仏体が坐っていられたのだが、今はその蓮の花びらは全部なくなってしまったので、ちょっと見たところはわるくなった。もとのかたちは鳳凰堂の阿弥陀如来(前頁の写真)の台座に似たようなかたちをしていたものと想像される。
 しかし、それから下は、大体よくのこっている。ちょっとめんどうだが、「研究者のために」の「中禅寺木造薬師如来坐像」を参考にして各部の名前を勉強してみよう。
 一番上のお椀のようなところが「蓮華部」−しかし花びらが欠けてしまっているので、「蓮肉」だけがある。その下の丸いところが「上敷茄子」、その下の波をうったような曲線のふちのある板が「蕊」、その下の周囲にずっとはり出した花のようなかたちが、「華盤」、その下の八角の箱のようなところが「下敷茄子」、その下の八角の板が「受座」、その下の反った花びらの並んでいるところが「反花」、その下の網の目のような刻みの入ったところが「蛤座」、その下のたてに線の並んでいるところが「上框」、その下の最下部の八角の台が「下框」、その下についている八つの脚が「隅足」という。
 以上全部ひっくるめて、九つの部品が重なっているのでこれを「九重の蓮華座」というのである。(蕊は「華盤」の付属物であるから一重には数えない)
 この「蓮華座」というのは、古い時代には比較的簡単なものが多く、平安前期・後期・鎌倉と時代が下るにしたがって複雑になっていく。この薬師堂の「蓮華座」は、蓮肉部のかたち、「華盤」の肉の盛り上り、「反花」の彫り方などに、藤原期から鎌倉期へかけての特徴をそなえたものとして注目されている。たとえば横からみると一ばんつき出しているところが「華盤」だが、これは真上からみると八弁の花のかたちをしている。その花びらは、古いころは、一体となってつながっているが、だんだん一つずつ独立していく。この薬師如来の台座の「華盤」の花びらは、かなり独立しているので、ちょうど鎌倉初期ごろと考えられるわけだ。
 なお”騎射の墨絵”のあるところは、「上敷茄子」の上部にある「天板」というところである。

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