塩田平の文化と歴史

● 大法寺 厨子と須弥壇(しゅみだん)


 厨子というのは、仏像などを安置する両扉のあるものをいう。
 大法寺十一面観音は、観音堂の中の写真のようなお厨子に安置されている。四隅に1本づつの柱を立て、正面に扉をおく建物を模したもので、屋根が入母屋造りとなっているので、正式には、「方一間入母屋造り」といわれる。
 この建築は一見して、三重塔と違うつくり方であることがわかる。まず垂木が「扇垂木」といって放射状に四方に出ている。次に「組物」が、柱の上ばかりでなく、その間にもあって、正面からみると、四つの「組物」がすき間もなく並んでいる。このような構造を「詰組み」という。いずれも「禅宗様」建築の特徴である。
 また扉も、塔の扉と違って表面に桟が入っている。これは「桟唐戸」といってやはり「禅宗様」の特色である。
 この「禅宗様」の建築の中に、禅宗が入る前の平安時代の十一面観音像が納められている。ということは、この厨子は、十一面観音と同時につくられたものではなく、はるか後代のものであることを物語っているわけだ。
 厨子の下にある壇が「須弥壇」である。まず「勾欄」(手すり)を注意しよう。一番上の丸い横材をささえているのが「束」だが、そのささえているところは、左右にひろがっている蓮の葉の文様がある。その下の四角な横材の下には、六つの透かし彫りがある。これが「刳りがた」だ。どことなく異国的な趣きを感じさせるが、これも中国から入ってきたばかりの「禅宗様」によっているからである。
 なお棟の左右に上げられた鯱は日本で最も古い鯱の一つである。名古屋城をはじめ、鯱を屋根の棟に上げた建築は、全国にたくさんあるが、みなこのような鯱が祖形となっているのである。

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