塩田平の文化と歴史

● 大法寺 三重塔(国宝)


 大法寺三重塔を北側から写したもの。
 三重の屋根の曲線が、さながら中空に舞う鳥の羽根のように、のびのびと軽やかである。しかも塔全体としては、どっしりと安定し、天高くそびえる相輪とともに、いかにも荘重で崇高な感じを与えている。
 よく見ると、この塔は、一層・二層・三層と、上に行くにしたがって、塔身の幅が小さくなっていることに気づくだろう。この最下層から最上層にかけてだんだん減っていく割合を「逓減率」と呼んでいる。時代の古い塔はこの逓減率が大きく、新らしいほど小さくなるのが普通である。
 しかしどの層も、屋根は大きく張り出さねばならない。そのため柱の上に「組物」というものがある。この「組物」は第一層目は「二手先」という組み方だが、第二層・第三層は「三手先」という特別念の入った組み方をして、より大きく屋根をはり出している。
 塔の「組物」は全部「三手先」にするのが普通なのだが、この塔では、初層を「二手先」にしている。これは「組物」の出を少くし、その分だけ初層の幅を広くしたもので、これによって初層の内部を広く使い易くすると同時に、初層と二・三層の逓減率を大きくし、安定感を生んでいる。
 柱と柱は、すべて「長押」という横材によって結ばれている点、一層・二層には「勾欄」(手すり)がある点、各層の四面についている扉が板扉である点など、みな「和様」という様式の特徴を示すもので、これらを安楽寺八角塔とくらべてみると、「禅宗様」との相違がよくわかる。
 なお、この塔の屋根は「檜皮葺」といって、檜の皮でふいてある。古建築の屋根には、「瓦葺」「檜皮葺」「柿葺」「茅葺」などいろいろあるが、「檜皮葺」というのは、京都御所の屋根などと同じで、最高級の葺き方だ。この屋根のきめの細かいしっとりした肌合いは、上品な「反り」の曲線とともに、一そう塔の格調を高いものにしていることも忘れてはならない。
 また第三層の扉の上部を注意すると、板壁のところに、白い色が残っているのがわかる。創立当時は、塔全体が朱色(所によっては緑色)に塗られていた。その下地にした胡粉のあとが残っているのである。
 造立のときは「青丹よし…」といわれるように、朱や緑の色もあざやかな塔であったのだろう。その面影を伝える重要な場所である。

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